コラム17
 
アッサムの問題(後編)

すべてのアッサムの茶園は、テロ組織に対して「安全税」を支払っていると前回書きました。

確かに誘拐は誘拐であり、恐喝は恐喝です。どう言い繕ってもこれらの行為を肯定することはできません。しかし一方で、彼らを断罪し、取締りを徹底したしても、根本的な問題の解決にはならないことも事実です。

問題は、茶園で働く人々の生活が貧しい、という一言に尽きます。僕は去年、ダージリンの、紅茶通なら誰でも名前を聞いたことがあるだろう名門茶園の一つを訪問させてもらいました。(詳しくはホームページの「茶園訪問記」参照。)

訪れたもう一つの茶園では、住宅も割と立派で、子供たちの服装も小奇麗だったので、茶園によって事情がかなりと違う思われますが、そこで驚いたことの一つが、暮らしの貧しさでした。

まず、茶園に辿りつくまでの道がボロボロ。幹線道路を外れて私道に入ると、ところところ舗装がはげて、土が剥き出しでデコボコです。

また、幅が狭いので、少しハンドルを切り損ねたら坂を転げ落ちそうで、これで紅茶の搬送ができるのか心配になるほどでした。

茶園で働く人たちの家は(いろいろな家があるのですが)、日本だったら過疎地の廃屋でしか滅多に見られないような家がけっこうありました。

ここで生産される紅茶がヨーロッパや日本に高値で取引され、優雅なティーブレークを提供しているとは、ギャップが激しすぎて、どうもうまく想像ができません。(まぁ、そこで働いている人たちの表情はみんな明るいですけど。)

質が高く、多くが輸出されるダージリンでさえこうなのだから、国内消費が大半のアッサムでなら、尚更、現場労働者の暮らしが楽ではないのが類推できます。

また、この状況が、アッサムに茶園が作られて以来、百数十年も続いてきて、あまり状況が良くなっていないという現実が茶園オーナーに対する反発を引き起こすのでしょう。貧困が解決されない限り、テロは決してなくなることはありません。

いろいろとネガティブなことを書きましたが、現場で働いている人たちは、自分の仕事に誇りと責任を持っています。マネージャーさんなどは命をかけているかのようです。自分たちが作った紅茶が「おいしかったよ (^-^)」と言われたら、みんな嬉しそうにニッコリと笑うはずです。(おわり)

(山内)

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