紅茶に限らず、お茶はもともと熱くして飲むものでした。現在あるような、冷やして飲む「アイスティー」が発明されたのは1904年、場所はアメリカのセントルイスでのことでした。
当時、セントルイスでは万国博が開かれており、イギリス人のリチャード・ブレチンデンという紅茶商が、一生懸命に紅茶の宣伝・販売をしていました。
ところが、猛暑の日には誰も熱い紅茶なんて飲みたくなりません。
そこで、半ばヤケになったブレチンデンさんが、紅茶に氷を入れて「冷たい紅茶だよーーー!」と叫んだところ、これが大ヒット。
暑い中では、冷たいものなら何でも売れるということはあるにしろ「冷やした紅茶もなかなかイケルじゃんか!」ということが分かって、それ以来、アメリカを中心にアイスティーが普及しはじめました。
アイスティーの歴史はおよそ100年なんですね。氷がなければアイスティーは作れないことを考えると、100年というアイスティーの歴史は、意外に長いように思われます。
ところが、このアイスティーは、紅茶の本家イギリスではあまり飲まれていないようです。
その理由一つとして、保守的で、伝統を重んじるイギリス社会からすると、アイスティーなどは「邪道」であることが挙げられるでしょう。
でも、その一番大きな理由は、イギリスの夏が、日本やアメリカなどよりもずっと涼しいからではないかと、僕は個人的に推察しています。(ロンドンの今週の最高気温は大体20℃前後です。)
ところで、時代と国が違うとはいえ、同じ紅茶屋として、夏になんとか紅茶を売ろうとしたリチャード・ブレチンデンさんの気持ちが僕にはよくわかります(笑)。読者のみなさんも、アイスティーはいかがですか?
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