コラム29
 
八十八夜の謎

先週のコラム「八十八夜茶はなぜおいしい?」の最後の部分で「ところで、立春から「八十八」日目頃が重要なのは分かるけれど、なぜ「夜」なんでしょうか? どなたかご存知の方がいましたらメールで教えてください!」と書いたところ、4人の方からメールをいただきました。

今回は、お便りをもとになぜ八十八「夜」なのか解説してみたいです。

その前に簡単に暦についておさえておきましょう。現在、我々が使っている暦は太陽暦(いわゆる新暦)です。

これは地球が太陽の周りを一周する時間を一年と定めた暦法のこと。対して太陰暦(いわゆる旧暦)は、29日半周期で満ち欠けをする月の周期的変化を基準にしたもので、一ヵ月は29日か30日です。
 

旧暦の問題点は、暦の日付が太陽の位置とは無関係なので、季節と暦にズレが生じることでした。一年が354日しかないので、毎年10日以上遅れます。(そのため、3年に一度うるう月がありました。)

そうすると、一年の決った時期に決った作業をする必要がある農耕にとって非常に困るのです。

それを補うために古代中国人が発明したのが二十四気です。黄道上の冬至点を起点にして一太陽年を24等分し、立春、啓蟄などの24の節気を配置します。
 

その間隔は15日か16日です。そうすると、今が何月であるかに関係なく、季節がわかります。

さて、八十八夜ですが、前回書いたように、これは立春の日を起点として88日目のことを指します。次に横浜市の読者の方のメールを紹介します。(諒解済み)
 

私も昔、八十八夜を不思議に思ったのですが、あるとき、ふと気付きました。月の満ち欠けは29.5日周期なのですが、それが3回繰り返されると、29.5×3=88.5日!となります。

たぶん、昔の人は月の満ち欠けを見ながら、摘み取りの日を決めていたに違いない!!

立春の日の月の形を覚えておき、それと同じ形になるのを3度待つ。村の長老がそれを見て、「うむ。今日が八十八夜じゃ。明日、茶摘を開始するぞ」と決断し、村の人たちはお祭りもしくは祈願を行う。

皆、うきうきしている。これが冒頭の「夏も近づく八十八夜」ではないでしょうか。

 うーん、なるほど。月齢を基準にカウントすると、八十八「日」ではなく八十八「夜」になるんですね。

 因みに八十八夜は節分、彼岸と並んで「雑節」と呼ばれるもので、中国からきた二十四気に日本の気候に必要な暦日を加えたものです。

八十八夜の頃は、「八十八夜の別れ霜」と言われたように、まだ霜が下りる可能性がある頃で、種まき、茶摘み、養蚕などに追われて忙しい農家に「霜に気をつけなさい。暖かくなったからといって、まだ油断しちゃいかんよ」注意を促す意味があったのでした。

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