農薬を使わずに栽培するためには、作物を病虫害に強いものにする必要があります。
前回のコラムでは、有機肥料で地味を肥やすことによって、農薬を使わずに栽培できるということを書きました。
しかし、無農薬栽培をするポイントはそれだけではありません。日本の茶園では(多分、インドの茶園も同じだと思いますが)、大半が品種改良で作られた同じ種類のお茶の樹を栽培しています。
これは、挿し木で増やすので、遺伝的に全く同じ種類のお茶です。
全く同じ種類のお茶の樹の場合、ある害虫や病気がいったん流行ると、その茶園の大半が被害を受けてしまいます。
一方、挿し木からではない、種から育てた在来種だと一本ごとに遺伝情報が違います。
害虫や病気への抵抗性がそれぞれ異なるため、その茶園全体が全滅するような大規模な被害は、挿し木の茶園よりも少なくてすみました。
生物学的な観点からすると、環境の変化に対応するために多様性を確保することが非常に大切なのですが、生産者としては、味がまちまちな在来種よりも、お茶の味が一定して、収量も多い特定の品種を育てたいのは当然のことです。
また、農薬を使わないためには、周囲の環境も重要になります。
例えば、同じお茶農家であるAさんとBさんの茶園が隣あっていて、Aさんは無農薬、Bさんは農薬を使う栽培をしている場合、Aさんの茶畑には虫が多くやってきます。
その虫が隣のBさんの茶畑に、何らかの被害を及ぼすことは想像に難くありません。
何年か前のテレビドラマ『北の国から』で、農家の草太が、有機栽培を試みている隣の畑で虫が発生したことを聞き、自分の畑を守るため強制的に隣の畑に農薬を撒いているシーンがありましたが、そういうことにもなりかねません。
お茶の場合、茶園が集団で集まっていたり大規模経営よりも、山の中に茶園が点在しているダージリンのようなところの方が、害虫を食べてくれる鳥などの天敵が多くいて、病虫害が伝染しにくいため、有機栽培をしやすいと言えます。
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