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先週号のコラム『ウンカのもたらすもの』の中で、ちょっとだけ日本茶が出てきたこともあって、今回は久しぶりに日本茶(緑茶)に関することを書いてみたいと思います。
先週号でも書いたように、お茶の種類は製法によって大きく三つに分けることができます。 1.発酵茶(紅茶)、2.半発酵茶(ウーロン茶)、3.不発酵茶(緑茶)
緑茶は、摘み取った葉をまず蒸気で蒸すか、或いは釜で炒(い)ることによって発酵を止めます。 「深むし茶」というのは、発酵を止めるためにお茶の葉を蒸す時間を通常より長目にする製法の緑茶です。 普通なら40秒程度の蒸し時間なのに比べ、「深むし茶」はその倍以上の時間を蒸します。 この「深むし茶」の製法が確立したのは意外と新しく、1960年代の後半になってからのことでした。 しかし、その原点は、明治時代の手揉み茶誘進流の開祖戸塚豊蔵という人物の製法にあったと言われています。 江戸時代末期、緑茶の製法に技術革新が生まれました。それまでは、庶民が飲んでいたお茶は、蒸した後は天日干しをしただけだったのが、蒸した後に茶葉を「揉む」という作業を加えることによって味と見た目に飛躍的な進歩が見られるようになったのです。 時代が明治維新を迎える頃になると、日本茶が生糸と並んで輸出品の花形になりました。そうなるとお茶を作る職人たちは、揉み方などの製法にいろいろな工夫をするようになり、ひいては流派を名乗るようになりました。 そんな流派の一つである誘進流の茶師が、蒸し時間を長くする製法を初めにおこなったそうです。 製法の特徴というのは特に複雑でも何でもないのですが、それが味に少なからぬ影響を与えます。 味は渋みが少なくなるのと同時に甘みが増してまろやかになり、香りが甘く穏和になります。高温で長い間、急須の中にあっても苦味が出にくいのです。 また、蒸し時間を長くすることで茶葉の形が壊れやすいため、粉が多くなります。そのため、普通の急須で淹れると詰まりやすいので、茶漉しが大きい深むし用の急須が向いています。(山内) |
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